はじめに
事業活動を行う上で、環境関連法令の遵守は企業の社会的責任として極めて重要です。
現在、日本には約80種類の環境関連法令が存在し、それぞれに届出、許可申請、定期報告、管理者の選任、設備の点検など、様々な義務が定められています。
これらの法令は、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、廃棄物処理、化学物質管理、省エネルギー、地球温暖化対策など、多岐にわたる分野をカバーしています。
法令違反は、罰金や懲役などの刑事罰の対象となるだけでなく、企業の社会的信用を大きく損なう可能性があります。
しかも、これらの法令は頻繁に改正され、新たな義務が追加されることも少なくありません。
事業者の皆様が本業に専念しながら、すべての環境法令を正確に把握し、適切に対応することは容易ではありません。
このガイドでは、主要な環境関連法令について、届出・許可・報告・管理者選任・点検などの義務を詳しく解説いたします。
貴社の法令遵守体制の構築・維持にぜひお役立てください。
大気汚染防止法
法律の目的と概要
大気汚染防止法は、工場や事業場から排出されるばい煙、揮発性有機化合物(VOC)、粉じん等による大気汚染を防止し、国民の健康を保護するとともに生活環境を保全することを目的としています。
参考: 環境省 大気汚染防止法について
ばい煙発生施設の届出
該当条件:
- ボイラー、加熱炉、焼却炉など、政令で定める32種類のばい煙発生施設を設置する工場・事業場
- 施設の規模要件(例:ボイラーは伝熱面積10㎡以上または燃料使用量50L/時以上)
届出義務:
- 新設時: 施設設置の60日前までに都道府県知事(または政令市長)に届出
- 変更時: 構造変更等の60日前までに変更届出
- 廃止時: 廃止後30日以内に廃止届出
届出書類:
- ばい煙発生施設設置届出書
- 施設の配置図、構造図
- ばい煙の処理方法を明らかにする書類
- 排出ガスの排出方法を明らかにする書類
更新: 届出事項に変更が生じた場合のみ変更届が必要
注意点:
- 届出後60日間は施設の設置工事に着手できません(ただし、届出から30日経過後、都道府県知事が支障がないと認めた場合は着手可能)
- 排出基準の遵守義務があり、定期的な測定と記録保存が必要です
VOC排出規制
VOC排出規制は、
揮発性有機化合物(VOC)が大気中に排出されるのを抑制するための制度で、主に塗装、印刷、洗浄などの工程を含む業界が対象となります。
対象:
工場や事業場で一定の規模以上の「揮発性有機化合物(VOC)」を排出する事業者
実施義務:
- 「揮発性有機化合物排出施設」を設置・変更する際に、事前に都道府県知事等へ届け出る義務
- 排出基準の遵守
- 年1回以上の排出濃度測定 など
主な対象業界:
VOCの排出量が多い、またはVOCを多く含む製品(塗料、インキ、洗浄剤、接着剤など)を使用する業界が主な対象となります。
具体的な対象業界・施設の種類は以下の通りです。
- 塗装業界: 自動車、金属製品、家具などの製造における塗装・乾燥施設。
- 印刷業界: オフセット輪転印刷やグラビア印刷などの乾燥施設。
- 化学工業: 溶剤として使われたVOCを乾燥させるための施設など。
- 工業用洗浄: 金属製品などの製造工程における洗浄施設(乾燥施設を含む)。
- 接着剤業界: 接着剤の使用工程。
- 石油関連: ガソリン、原油、ナフサなどの貯蔵タンク(一定の容量以上)。
規制対象となる具体的な施設の規模要件(送風能力や貯蔵容量、洗浄面積など)は政令で定められています。
事業規模に関わらず、これらの「規制対象施設」に該当する場合は、法律に基づく義務を履行する必要があります。
アスベスト(石綿)に関する届出・報告
石綿による大気汚染を防止するため、建築物等の解体・改造・補修工事において、令和2年以降、段階的に規制が強化されています。
事前調査の実施:
該当条件:
- すべての建築物・工作物の解体・改造・補修工事(石綿の有無に関わらず)
実施義務:
- 有資格者による事前調査の実施(令和5年10月1日から義務化)
- 建築物石綿含有建材調査者(一般・特定・一戸建て等)
- 令和8年1月1日からは工作物も対象
- 調査結果の書面作成・現場への備え付け
- 記録の3年間保存
事前調査結果の報告:
該当条件:
- 一定規模以上の解体・改造・補修工事
- 解体工事: 床面積の合計80㎡以上
- 改造・補修工事: 請負金額が100万円以上(税込)
- 工作物: 請負金額が100万円以上(税込)
報告義務:
- 工事開始前に「石綿事前調査結果報告システム」から電子申請
- 労働基準監督署と都道府県等の両方に報告(システムで一元的に可能)
届出対象特定工事の届出:
該当条件:
- レベル1(吹付け石綿)、レベル2(石綿含有断熱材等)を使用した建築物等の解体・改造・補修工事
届出義務:
- 工事開始の14日前までに都道府県知事に届出
- 届出書には作業計画、工事方法、石綿飛散防止対策等を記載
記録の保存:
- 事前調査記録: 3年間保存
- 作業実施記録: 3年間保存
更新: なし(工事ごとに実施)
罰則:
- 事前調査義務違反: 30万円以下の罰金
- 報告義務違反、虚偽報告: 30万円以下の罰金
- 作業基準違反: 3月以下の懲役または30万円以下の罰金
水質汚濁防止法
法律の目的と概要
水質汚濁防止法は、工場・事業場から公共用水域に排出される水の規制、生活排水対策の推進等により、公共用水域および地下水の水質汚濁を防止することを目的としています。
参考: 環境省 水質汚濁防止法について
特定施設の設置届出
該当条件:
- 公共用水域に排水を排出する特定施設(政令で定める74種類の施設)を設置する工場・事業場
- 例: メッキ施設、洗浄施設、染色施設、貯蔵施設、飲食店の厨房施設など
届出義務:
- 新設時: 設置の60日前までに都道府県知事に届出
- 変更時: 構造等の変更の60日前までに変更届出
- 廃止時: 廃止後30日以内に廃止届出
- 承継時: 特定事業場の譲受け・借受け・相続・合併による承継後30日以内に承継届出
届出書類:
- 特定施設設置届出書
- 施設の配置図、構造図
- 排水処理方法を明らかにする書類
- 用水量、排水量等を記載した書類
排水基準の遵守:
- 有害物質(カドミウム、鉛、六価クロム、砒素、PCB等28項目)
- 生活環境項目(pH、BOD、COD、SS、大腸菌群数等15項目)
- 都道府県が定める上乗せ基準にも注意
測定義務:
- 排出水の汚染状態の測定と記録保存(3年間)
- 測定頻度は項目により異なる(有害物質: 年1回以上、生活環境項目: 1日1回以上など)
更新: 届出事項に変更が生じた場合のみ
有害物質使用特定施設・貯蔵指定施設の届出(平成24年改正)
該当条件:
- 有害物質(カドミウム、鉛、トリクロロエチレン等)を製造・使用・処理する特定施設
- 有害物質を貯蔵する指定施設(タンク等)
届出義務:
- 施設設置前に都道府県知事に届出
- 構造基準(地下浸透防止、漏えい検知等)の遵守
定期点検義務:
- 構造、設備の定期点検実施
- 点検記録の作成・保存(3年間)
地下水汚染時の対応:
- 事故時の応急措置と都道府県知事への届出
- 浄化措置命令の対象となる可能性
更新: 届出事項変更時
罰則:
- 無届設置・変更: 6月以下の懲役または50万円以下の罰金
- 虚偽届出: 3月以下の懲役または30万円以下の罰金
- 排水基準違反: 6月以下の懲役または50万円以下の罰金
廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)
法律の目的と概要
廃棄物処理法は、廃棄物の排出抑制、適正な処理、生活環境の保全、公衆衛生の向上を図ることを目的としています。
産業廃棄物の処理責任は排出事業者にあり、適正処理の確保が求められます。
参考: 環境省 廃棄物処理法について
産業廃棄物管理票(マニフェスト)交付等状況報告書
該当条件:
- 前年度(4月1日~3月31日)に、産業廃棄物管理票(紙マニフェスト)を1枚でも交付した排出事業者
- 電子マニフェストのみを使用している場合は報告不要(情報処理センターから報告されるため)
報告義務:
- 提出期限: 毎年6月30日まで
- 提出先: 都道府県知事または政令市長
- 提出方法: 郵送または電子申請(自治体により異なる)
報告内容:
- 交付した産業廃棄物の種類・数量
- 処理を委託した処理業者の名称
- 運搬受託者、処分受託者の許可番号
記録保存:
- マニフェストの写し: 5年間保存
- 報告書の控え: 適切に保管
更新: 毎年1回
注意点:
- 紙マニフェストと電子マニフェストを併用している場合は、紙マニフェスト分のみ報告
- 報告義務違反には罰則(30万円以下の罰金)
多量排出事業者の処理計画書・実施状況報告書
該当条件:
- 前年度の産業廃棄物の発生量が1,000トン以上の事業場、または
- 前年度の特別管理産業廃棄物の発生量が50トン以上の事業場
報告義務:
- 処理計画書: 毎年6月30日までに提出
- 実施状況報告書: 翌年度の6月30日までに提出(前年度計画の実施状況)
- 提出先: 都道府県知事または政令市長
計画書の記載内容:
- 産業廃棄物の排出抑制に関する事項
- 産業廃棄物の分別に関する事項
- 再生利用に関する事項
- 処理の委託に関する事項
- 処理施設の設置に関する事項
公表義務:
- 提出した計画書及び実施状況報告書の概要をインターネット等で公表
更新: 毎年1回(計画書・報告書の両方)
罰則:
- 計画書・報告書の未提出、虚偽記載: 30万円以下の罰金
事業場外保管の届出
該当条件:
- 事業場の外で、自ら排出した産業廃棄物を300㎡以上の場所で保管する場合
届出義務:
- 保管開始の7日前までに都道府県知事に届出
- 届出事項の変更時は変更届が必要
届出内容:
- 保管場所の所在地、面積
- 保管する産業廃棄物の種類、容量
- 保管期間、保管方法
保管基準の遵守:
- 囲いの設置、掲示板の設置
- 高さ制限の遵守
- 飛散・流出・悪臭発散の防止
更新: 届出事項変更時
罰則:
- 無届保管: 6月以下の懲役または50万円以下の罰金
産業廃棄物処理業の許可
該当条件:
- 他者から委託を受けて産業廃棄物の収集運搬・処分を業として行う者
許可の種類:
- 産業廃棄物収集運搬業許可
- 産業廃棄物処分業許可
- 特別管理産業廃棄物収集運搬業許可
- 特別管理産業廃棄物処分業許可
許可申請先:
- 収集運搬業: 積込場所・荷卸場所を管轄する都道府県知事(政令市長)
- 処分業: 処分場所を管轄する都道府県知事(政令市長)
許可の有効期間: 5年間
更新: 5年ごとに許可更新申請が必要(有効期間満了の2~3ヶ月前に申請)
許可要件:
- 施設・設備基準の充足
- 申請者の欠格要件に該当しないこと
- 経理的基礎を有すること
注意点:
- 都道府県ごとに許可が必要
- 許可なく業を行った場合、5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金(法人は3億円以下)
PRTR法(化学物質排出把握管理促進法)
法律の目的と概要
PRTR法は、人や生態系への有害性が懸念される化学物質について、事業者による環境への排出量・移動量の把握と国への届出を義務付け、データを集計・公表することで、化学物質の自主的な管理改善を促進する制度です。
参考: 経済産業省 PRTR制度について
第一種指定化学物質の排出量・移動量の届出
該当条件(すべてを満たす場合):
- 対象業種: 24業種(製造業、電気業、ガス業、下水道業、鉄道業など)に該当
- 従業員数: 常時使用する従業員数が21人以上
- 取扱量: 対象化学物質(515物質※令和5年度から変更)を年間1トン以上取扱い(特定第一種指定化学物質は0.5トン以上)
対象化学物質:
- 第一種指定化学物質: 515物質(令和5年4月1日より)
- 特定第一種指定化学物質(発がん性等が特に高い物質): 23物質
届出義務:
- 届出期間: 毎年4月1日~6月30日
- ※電子届出の場合、令和4~6年度は7月31日まで延長措置あり
- 対象期間: 前年度(4月1日~3月31日)の排出量・移動量
- 届出先: 経済産業大臣および環境大臣(実際は各事業所所在地の都道府県経由)
届出方法:
- 電子届出推奨: NITE(製品評価技術基盤機構)の「PRTR届出システム」を利用
- 書面届出も可能(都道府県に提出)
届出内容:
- 大気への排出量
- 公共用水域への排出量
- 土壌への排出量
- 事業所内埋立処分量
- 下水道への移動量
- 事業所外への移動量(廃棄物としての移動)
算出方法:
- 物質収支法、実測法、排出係数法など適切な方法で算出
- 排出量・移動量の合理的な算出が求められる
更新: 毎年1回
届出後の情報公表:
- 国が集計したデータは、事業所ごとに一般公開されます
罰則:
- 届出義務違反、虚偽届出: 20万円以下の過料
注意点:
- 令和5年4月から対象物質が変更(変更後515物質)
- 新たに対象となった物質、対象から除外された物質を確認
- 製品に含まれる化学物質も取扱量に含まれる場合がある
省エネ法(エネルギーの使用の合理化等に関する法律)
法律の目的と概要
省エネ法は、工場・事業場、輸送、建築物、機械器具等におけるエネルギー使用の合理化を総合的に進めるための法律です。
事業者全体のエネルギー使用量に応じて、特定事業者等に指定され、報告義務等が課されます。
参考: 資源エネルギー庁 省エネ法の概要
定期報告書(エネルギー使用状況届出)
該当条件:
- 特定事業者: 事業者全体で原油換算1,500kl/年以上のエネルギーを使用する事業者
- 特定連鎖化事業者: フランチャイズチェーン全体で原油換算1,500kl/年以上
- 認定管理統括事業者: 複数事業者で一体的に管理する場合
報告義務:
- 提出期限: 毎年7月末日まで
- 対象期間: 前年度(4月1日~3月31日)
- 提出先: 経済産業大臣および事業所管大臣
- 提出方法: EEGS(電子報告システム)から電子提出
報告内容:
- エネルギー使用量(燃料、熱、電気)
- エネルギー消費原単位(生産量当たりのエネルギー使用量)
- 前年度比でのエネルギー消費原単位の変化
- 電気需要最適化評価原単位(令和5年度実績分より追加)
- 判断基準の遵守状況
判断基準:
- 年平均1%以上のエネルギー消費原単位の改善
- 電気需要最適化(需要の平準化)への取組
更新: 毎年1回
中長期計画書
該当条件:
- 特定事業者等
提出義務:
- 定期報告書と合わせて毎年7月末日までに提出
- 向こう5年間程度の中長期的な省エネルギー対策の計画
計画内容:
- エネルギー消費原単位の年平均1%以上改善目標
- 具体的な省エネルギー対策(設備更新、運用改善等)
- 投資計画、実施時期
更新: 毎年1回(毎年ローリング)
エネルギー管理統括者・エネルギー管理企画推進者の選任
該当条件:
- 特定事業者等
選任義務:
- エネルギー管理統括者: 事業者全体のエネルギー管理を統括(取締役等)
- エネルギー管理企画推進者: エネルギー管理の実務を推進(部課長等)
- 選任後、遅滞なく届出
更新: 解任・死亡時に届出
第一種エネルギー管理指定工場等におけるエネルギー管理者の選任
該当条件:
- 年間エネルギー使用量が原油換算3,000kl以上の工場・事業場(第一種エネルギー管理指定工場等)
選任義務:
- エネルギー管理者: 国家試験合格者または認定研修修了者
- 選任事由発生から6ヶ月以内に選任
- 選任後、遅滞なく届出
資格:
- エネルギー管理士(熱・電気)
- エネルギー管理講習修了者
更新: 解任・死亡時に届出
罰則:
- 定期報告書の未提出、虚偽報告: 50万円以下の罰金
- 判断基準不遵守に対する命令違反: 100万円以下の罰金
- エネルギー管理者の未選任、選任命令違反: 50万円以下の罰金
温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律)
法律の目的と概要
温対法は、地球温暖化対策の推進を図り、温室効果ガス排出量の削減を進めることを目的としています。
一定量以上の温室効果ガスを排出する事業者には、排出量の算定・報告義務が課されます。
温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度
該当条件(すべてを満たす場合):
- 排出量要件: 温室効果ガスの種類ごとに全事業所の排出量合計がCO2換算で3,000トン以上
- 従業員要件: 事業者全体で常時使用する従業員数が21人以上
対象温室効果ガス:
- 二酸化炭素(CO2)
- メタン(CH4)
- 一酸化二窒素(N2O)
- ハイドロフルオロカーボン(HFC)
- パーフルオロカーボン(PFC)
- 六フッ化硫黄(SF6)
- 三フッ化窒素(NF3)
報告義務:
- 特定事業所排出者: 毎年4月1日~7月31日
- 特定輸送排出者: 毎年4月1日~6月末日
対象期間:
- HFC、PFC、SF6、NF3: 暦年(1月1日~12月31日)
- その他の温室効果ガス: 年度(4月1日~3月31日)
報告先:
- 事業所管大臣(電子報告システムEEGSから提出)
報告内容:
- 各温室効果ガスの排出量
- 算定方法(燃料使用量×排出係数等)
- エネルギー起源CO2の排出量内訳
省エネ法との関係:
- エネルギー起源CO2のみが3,000トン以上の場合、省エネ法の定期報告書で代替可能
- その他の温室効果ガス(メタン、HFC等)がある場合は、別途温対法の報告が必要
公表:
- 国が集計し、事業所ごとの排出量を公表
更新: 毎年1回
罰則:
- 報告義務違反、虚偽報告: 20万円以下の過料
注意点:
- 算定方法は「温室効果ガス排出量算定・報告マニュアル」に従う
- エネルギー使用量だけでなく、工業プロセスからの排出、廃棄物の焼却による排出等も含む
フロン排出抑制法(フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律)
法律の目的と概要
フロン排出抑制法は、オゾン層破壊や地球温暖化の原因となるフロン類の製造から廃棄までのライフサイクル全体にわたる包括的な対策を講じることを目的としています。
業務用のエアコン(スポットクーラーなども含む)・冷凍冷蔵機器の管理者には、適切な管理と定期点検の義務があります。
簡易点検
該当条件:
- 業務用エアコン(スポットクーラーなども含む)・冷凍冷蔵機器(第一種特定製品)を使用するすべての管理者
- 工場、事務所、店舗、病院、学校等の管理者
点検頻度:
- 3ヶ月に1回以上(年4回以上)
点検内容:
- 外観の損傷、腐食、錆、油漏れの有無
- 異常音、異常振動の有無
- 冷媒配管の接続部からの油漏れ
- 機器の取扱説明書に基づく点検
実施者:
- 管理者自身または従業員(資格不要)
記録義務:
- 点検記録簿の作成・保存(機器廃棄後3年間)
- 点検年月日、点検者氏名、点検内容、異常の有無等を記録
更新: 継続実施(3ヶ月ごと)
定期点検
該当条件:
- 圧縮機に用いられる電動機の定格出力が7.5kW以上の第一種特定製品
点検頻度:
- 7.5kW以上50kW未満: 3年に1回以上
- 50kW以上: 1年に1回以上
点検内容:
- 直接法または間接法によるフロン類の漏えいの有無の確認
- 外観検査に加え、発泡試験、冷媒濃度測定等の専門的点検
実施者:
- 第二種冷媒フロン類取扱技術者
- 第一種冷凍機械責任者
- 十分な知見を有する者
記録義務:
- 点検記録簿の作成・保存(機器廃棄後3年間)
更新: 定期的に実施(1年または3年ごと)
注意点:
- 簡易点検と定期点検は別物(簡易点検は継続実施)
フロン類算定漏えい量報告
該当条件:
- 1事業者(法人単位)で年間フロン類漏えい量が1,000t-CO2以上の場合
報告義務:
- 報告期限: 毎年7月31日まで
- 対象期間: 前年度(4月1日~3月31日)
- 報告先: 事業所管大臣
- 報告方法: EEGS(電子報告システム)から電子提出
算定方法:
- 年度内のフロン類の充填量から回収量を差し引いて算定
- フロン類の種類ごとにGWP(地球温暖化係数)を乗じてCO2換算
更新: 毎年1回(該当する場合のみ)
罰則:
- 簡易点検・定期点検の未実施: 50万円以下の過料
- 点検記録の未作成・虚偽記載: 50万円以下の過料
- フロン類算定漏えい量報告の未提出、虚偽報告: 10万円以下の過料
参考:
公害防止組織整備法(特定工場における公害防止組織の整備に関する法律)
公害防止組織整備法は、製造業等の特定工場において、公害防止を図るための人的組織(公害防止管理者等)の整備を義務付ける法律です。
適切な資格者を選任し、公害防止業務を行わせることで、公害の発生を未然に防止します。
公害防止統括者
該当条件:
- 特定工場(製造業等で政令で定める特定施設を設置する工場)
- 常時使用する従業員数が21人以上
選任義務:
- 選任事由発生から30日以内に選任
- 選任後30日以内に都道府県知事に届出
役割:
- 公害防止に関する業務を統括管理
- 工場全体の公害防止体制の統括
資格要件:
- 不要(工場長、事業場長等の管理的地位にある者が適任)
更新: 解任・死亡時に届出(30日以内)
公害防止主任管理者
該当条件:
- 一定規模以上の特定工場(複数種類の公害防止管理者を選任する工場)
- 例: ばい煙発生施設の排出ガス量が4万㎥/h以上、かつ排水量が1万㎥/日以上
選任義務:
- 選任事由発生から60日以内に選任
- 選任後30日以内に都道府県知事に届出
役割:
- 複数の公害防止管理者を指揮
- 公害防止業務の技術的事項を総括管理
資格要件:
- 国家試験合格: 公害防止主任管理者試験
- 資格認定講習修了: 産業環境管理協会の講習修了
更新: 解任・死亡時に届出(30日以内)
公害防止管理者
該当条件:
- 特定工場(施設の種類と規模により区分)
選任義務:
- 選任事由発生から60日以内に選任
- 選任後30日以内に都道府県知事に届出
役割:
- 施設の維持管理
- ばい煙、排水等の測定・記録
- 異常時の応急措置
資格の種類(公害の種類により区分):
- 大気関係
- 大気関係第1種~第4種公害防止管理者
- 施設の規模や排出ガス量により区分
- 水質関係
- 水質関係第1種~第4種公害防止管理者
- 排水量や有害物質の使用により区分
- 騒音・振動関係
- 騒音・振動関係公害防止管理者
- ダイオキシン類関係
- ダイオキシン類関係公害防止管理者
- 特定粉じん関係
- 特定粉じん関係公害防止管理者(石綿)
- 一般粉じん関係
- 一般粉じん関係公害防止管理者
資格取得方法:
- 国家試験合格: 産業環境管理協会が実施
- 資格認定講習修了: 一定の実務経験者が対象
更新: 解任・死亡時に届出(30日以内)
罰則:
- 公害防止管理者等の未選任: 30万円以下の罰金
- 選任届出義務違反: 3万円以下の過料
参考: 一般社団法人 産業環境管理協会
ダイオキシン類対策特別措置法
法律の目的と概要
ダイオキシン類対策特別措置法は、ダイオキシン類による環境汚染の防止と、その除去等を図り、国民の健康を保護することを目的としています。
参考: 環境省 ダイオキシン類対策
特定施設設置届出
該当条件:
- ダイオキシン類を発生する特定施設を設置する工場・事業場
- 例: 廃棄物焼却炉、製鋼用電気炉、アルミニウム合金製造施設等
届出義務:
- 新設時: 設置の60日前までに都道府県知事に届出
- 変更時: 構造等の変更の60日前までに変更届出
- 廃止時: 廃止後30日以内に廃止届出
届出書類:
- 特定施設設置届出書
- 施設の構造、処理方法を示す書類
- 排出ガス・排出水の処理方法
更新: 届出事項変更時
測定結果報告
該当条件:
- 特定施設設置者
測定義務:
- 排出ガスまたは排出水中のダイオキシン類濃度の測定
- 測定頻度: 年1回以上(施設により異なる)
報告義務:
- 測定結果を都道府県知事に報告
- 報告時期: 測定実施後、速やかに(おおむね60日以内)
測定方法:
- 環境大臣が定める方法(JIS K 0311、JIS K 0312等)
記録保存:
- 測定結果の記録・保存
更新: 毎年1回以上
罰則:
- 無届設置: 6月以下の懲役または50万円以下の罰金
- 排出基準違反: 6月以下の懲役または50万円以下の罰金
- 測定義務違反: 30万円以下の罰金
騒音規制法・振動規制法
法律の目的と概要
騒音規制法・振動規制法は、工場・事業場、建設工事、自動車等からの騒音・振動を規制し、生活環境を保全することを目的としています。
参考: 環境省 騒音・振動対策
特定施設設置届出
該当条件(騒音規制法):
- 指定地域内で特定施設(金属加工機械、圧縮機、コンプレッサー、送風機など)を設置する工場・事業場
該当条件(振動規制法):
- 指定地域内で特定施設(金属加工機械、圧縮機、コンプレッサー、織機など)を設置する工場・事業場
届出義務:
- 新設時: 設置の30日前までに自治体(市町村長)に届出
- 変更時: 変更の30日前までに変更届出
- 廃止時: 廃止後30日以内に廃止届出
※原動機の定格出力が7.5kW以上のコンプレッサーは、「特定施設」に指定されており、設置する工場・事業場は、事前の届出義務があります。
届出書類:
- 特定施設設置届出書
- 施設の配置図
- 騒音・振動の防止方法を示す書類
規制基準の遵守:
- 時間帯・区域区分ごとの騒音・振動の規制基準
- 敷地境界線での測定
更新: 届出事項変更時
罰則:
- 届出義務違反: 3万円以下の罰金(騒音)、3万円以下の罰金(振動)
- 改善勧告・命令違反: 6月以下の懲役または50万円以下の罰金
土壌汚染対策法
法律の目的と概要
土壌汚染対策法は、土壌汚染の状況把握、汚染による健康被害の防止を図ることを目的としています。
土地所有者等には、一定の場合に土壌汚染状況調査や報告の義務があります。
参考: 環境省 土壌汚染対策法について
有害物質使用特定施設の廃止時の調査・報告
該当条件:
- 水質汚濁防止法の有害物質使用特定施設を廃止した者
義務:
- 廃止届: 廃止後30日以内に都道府県知事に届出
- 土壌汚染状況調査: 廃止後120日以内に実施
- 調査結果報告: 調査実施後、都道府県知事に報告
調査実施者:
- 指定調査機関(環境大臣の指定を受けた機関)
調査内容:
- 特定有害物質(鉛、六価クロム、トリクロロエチレン等26物質)による土壌汚染の有無
- 地歴調査、試料採取・分析
調査免除:
- 都道府県知事が土壌汚染のおそれがないと認めた場合
更新: なし(廃止時のみ)
形質変更時要届出区域等での土地の形質変更届出
該当条件:
- 要措置区域または形質変更時要届出区域内で土地の形質変更(掘削等)を行う者
届出義務:
- 着手の14日前までに都道府県知事に届出
届出内容:
- 形質変更の場所、面積
- 形質変更の方法、着手予定日、完了予定日
- 汚染土壌の取扱い方法
更新: なし(工事ごと)
罰則:
- 調査命令違反: 1年以下の懲役または100万円以下の罰金
- 調査結果の虚偽報告: 6月以下の懲役または50万円以下の罰金
- 無届形質変更: 6月以下の懲役または50万円以下の罰金
その他の主要環境法
悪臭防止法
概要: 工場・事業場から発生する悪臭を規制
届出: 悪臭発生施設の届出は不要(特定施設制度なし)
規制: 敷地境界線での臭気指数または特定悪臭物質濃度の規制基準遵守
下水道法
概要: 下水道への排除水の水質規制
届出: 特定施設設置の届出(公共下水道管理者)
規制: 除害施設の設置、排除基準の遵守
消防法
概要: 危険物の貯蔵・取扱いの規制
届出・許可: 指定数量以上の危険物貯蔵所・取扱所の設置許可
管理者: 危険物取扱者の選任、定期点検(1年または3年ごと)
高圧ガス保安法
概要: 高圧ガスの製造・貯蔵・販売等の規制
届出・許可: 高圧ガス製造施設の許可または届出
管理者: 高圧ガス製造保安責任者の選任
点検: 定期自主検査(年1回以上)、保安検査(3年ごと等)
労働安全衛生法
概要: 労働者の安全と健康の確保
届出: 特定の機械設置時の届出
管理者: 衛生管理者、安全管理者の選任
点検: 作業環境測定(6ヶ月以内ごと)、健康診断(年1回以上)
PCB特別措置法
概要: PCB廃棄物の適正処理
届出: PCB廃棄物・PCB使用製品の保管・所有状況届出(毎年)
期限: 処分期限が定められている(高濃度PCB: 2027年3月31日まで等)
資源有効利用促進法・各種リサイクル法
概要: 資源の有効利用、リサイクルの促進
報告:
- 特定の製品の生産量が一定規模以上の製造事業者等に対して、再生資源(リサイクル材)の利用に関する計画の提出や定期報告(家電、自動車等)
- 再商品化義務と帳簿記録義務(包装容器)
まとめ
環境関連法令は、事業活動に伴う環境負荷を低減し、持続可能な社会を実現するために不可欠な法的枠組みです。
本ガイドで紹介した主要な環境法について、重要なポイントをまとめます。
届出・許可が必要な主な法律
- 大気汚染防止法: ばい煙発生施設(60日前)、アスベスト事前調査(工事開始前)
- 水質汚濁防止法: 特定施設(60日前)
- 廃棄物処理法: 事業場外保管(7日前)、処理業許可(5年更新)
- 騒音規制法・振動規制法: 特定施設(30日前)
- 土壌汚染対策法: 有害物質使用特定施設廃止時(120日以内)、形質変更(14日前)
定期報告が必要な主な法律
- 廃棄物処理法: マニフェスト報告(毎年6月30日)、多量排出事業者報告(毎年6月30日)
- 大気汚染防止法:VOC排出規制に基づく都道府県知事への事前届出(設置・変更時(設置届、変更届)
- PRTR法: 化学物質排出量報告(毎年6月30日)
- 省エネ法: 定期報告書・中長期計画書(毎年7月末)
- 温対法: 温室効果ガス排出量報告(毎年7月末)
- フロン排出抑制法: 算定漏えい量報告(毎年7月末、該当する場合)
- ダイオキシン類対策特別措置法: 測定結果報告(年1回)
- PCB特別措置法: 保管状況届出(毎年)
管理者・資格者の選任が必要な主な法律
- 公害防止組織整備法: 公害防止統括者(30日以内)、公害防止管理者(60日以内)
- 省エネ法: エネルギー管理統括者、エネルギー管理者
- 消防法: 危険物取扱者、危険物保安監督者
- 高圧ガス保安法: 高圧ガス製造保安責任者
- 労働安全衛生法: 衛生管理者、安全管理者
点検が必要な主な法律
- フロン排出抑制法: 簡易点検(3ヶ月ごと)、定期点検(1年または3年ごと)
- 消防法: 危険物施設の定期点検(1年または3年ごと)
- 高圧ガス保安法: 定期自主検査(年1回以上)、保安検査(3年ごと等)
- 労働安全衛生法: 作業環境測定(6ヶ月以内ごと)
法令遵守のための重要なポイント
- 最新情報の確認: 環境法令は頻繁に改正されます。最新の法令情報を常に確認しましょう。
- 複数法令の適用: 一つの施設・活動に複数の法律が適用されることがあります。漏れなく確認しましょう。
- 自治体条例: 都道府県・市町村独自の環境条例(上乗せ規制)がある場合があります。
- 電子申請の活用: EEGS(省エネ法・温対法・フロン法)、PRTRシステム等の電子申請を積極的に活用しましょう。
- 記録の保存: 届出書、報告書、点検記録等は法定期間(通常3~5年)保存する必要があります。
- 期限管理: 報告・届出の期限を確実に管理し、余裕を持って準備しましょう。
- 専門家の活用: 複雑な法令への対応には、行政書士等の専門家のサポートが有効です。
注意事項
本ガイドご利用にあたっての留意点
- 情報の時点
- 本ガイドは2024年12月時点の情報に基づいて作成されています
- 法令は随時改正されるため、実際の手続きの際は必ず最新の法令をご確認ください
- 個別事案への適用
- 事業内容、施設の種類・規模により、適用される法令や義務内容は異なります
- 貴社の具体的な状況については、所管行政庁または専門家にご相談ください
- 自治体による違い
- 都道府県や政令市により、独自の条例や上乗せ規制がある場合があります
- 届出様式や手続き方法も自治体により異なる場合があります
- 罰則について
- 本ガイドに記載の罰則は主なものであり、すべてを網羅しているわけではありません
- 悪質な違反の場合、より重い罰則が科される可能性があります
- 他法令との関係
- 本ガイドで扱っていない環境法令も多数存在します
- 業種や事業内容により、他の法令が適用される可能性があります
参考資料・情報源
本ガイド作成にあたり、以下の公的機関の情報を参照しています。
- 環境省: https://www.env.go.jp/
- 経済産業省: https://www.meti.go.jp/
- 厚生労働省: https://www.mhlw.go.jp/
- 資源エネルギー庁: https://www.enecho.meti.go.jp/
- e-Gov法令検索: https://elaws.e-gov.go.jp/
- 一般社団法人 産業環境管理協会: https://www.jemai.or.jp/
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