2015年9月にISO14001が改訂され、その際、下記の8項目が主要な変更点として示されています。
この、8項目は旧版からの変更点としてだけでなく、
ISO14001:2015年版を理解する上で重要な要素になりますので、
こちらで確認していきましょう。
①経営戦略レベルでの環境マネジメント、及び事業プロセスへのEMSの統合
EMS(環境マネジメントシステム)の実施は組織の環境部門が全て担うものではなく、
組織の事業プロセスに内部化され、組織内の多様な観点が関与することによって、
EMSの戦略的な適用及び仕組みの有効性が向上するという観点から、
組織の事業、プロセスへの環境マネジメントシステム要求事項の統合に関する要求事項を規定しました。
②トップマネジメントのリーダーシップ及びコミットメントに対する説明責任の強化
トップマネジメント(組織のトップ)のコミットメントが確実に実施されるように、
箇条5においてリーダーシップに関する要求事項を規定し、
規格全体を通じて、PDCAの繋がりを明確かつ詳細に規定しました。
箇条5(リーダーシップ)において、EMSの有効性に説明責任を負うと明記されていることからも、
トップマネジメントにおけるリーダーシップの重要性は明らかになっています。
③環境保護の概念の拡張
旧規格は、「汚染の予防」という組織が環境に与える影響に関するマネジメントを実施するためのものであったが、
改訂版では、「環境保護」という観点から、環境(及びその変化)が、組織に与える影響についても、
マネジメントの対象としています。
すなわち、「組織」と「環境」とは、相互に影響を与え合う双方向の関係として捉えられています。
更に、環境保護に関し、汚染の予防だけでなく、持続可能な資源の利用、気候変動の緩和及び気候変動への適応並びに
生物多様性及び生態系の保護を含むように、環境に対する課題を拡張しています。
④リスク及び機会の概念の導入
環境マネジメントに関連して、組織を取り巻く外部及ぶ内部の課題、並びに利害関係者の期待がますます高まっていることを受けて、
旧規格までの「EMSの継続的な改善」から、「環境パフォーマンスの継続的改善」に、より重点を置く形で要求事項を規定しました。
⑤環境パフォーマンスの重視
近年の環境問題の深刻化に伴い、組織の環境パフォーマンスの向上に対する利害関係者の期待がますます高まっていることを受けて、
旧規格までの「EMSの継続的改善」から、「環境パフォーマンスの継続的改善」に、より重点を置く形で要求事項が規定されています。
⑥バリューチェーン及びライフサイクルの視点の導入
グローバル化及び組織経営の効率化が加速する中で、国境を超えた調達、生産拠点の移転及びアウトソース(外部委託)活動が拡大する現状を踏まえ、
製品またはサービスの原材料の取得から使用後の最終処分い至るライフサイクルの全ての段階で発生し得る環境影響を認識し、
適切な管理または影響を及ぼすことに関する要求事項を規定しました。
⑦コミュニケーションに関する要求事項の拡充
環境マネジメントに限らず、組織の活動、提供する製品またはサービスに関する情報開示または説明責任がますます求められている現状を踏まえ、
戦略的な、環境コミュニケーション及び情報の信頼性の確保に関する要求事項を導入しました。
⑧プロセスベースのEMS
旧規格で規定していたマネジメントシステムは、「手順」を定めることが中心でしたが、
改訂版では、要求事項の「手順」がなくなり、「プロセス」の概念に基づくマネジメントシステムへと進化しました。
「プロセス」の概念を基本とすることで、計画通りに結果を達成する組織の能力が向上し、
しいては、EMSの有効性の向上につながることが規定されました。